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「殿、こちらの書類に目を通していただきたい」
「殿、先程の件は如何なさいますか?」
「殿、軍の再編成については――」
 一国の主は、日々執務に追われている。だが、多くの執務をてきぱきをこなしていく孫権を見て、やはり彼は主に相応しいのだな、と周泰は感じていた。
 今日も護衛として、孫権の側に居つつ彼の姿を見守っている。
 執務が一区切りついた。そうなると、いつも孫権は躯をほぐす為に伸びをした後、周泰に話しかけてくるのだ。
 それを少し愉しみにしている周泰だった。
 が、
「……ふぅ」
 話しかけてこない。伸びすらしない。ただ深く息を吐いただけに終わってしまった。
 何故だ。何かまずい事……何か粗相でもしてしまったか。あれこれ考えたが、全くもって浮かんでこない。不安でいっぱいになりかけた時だ。
「殿、失礼します」
 呂蒙だ。
「呂蒙か、どうだった?」
 彼の姿を確認した孫権が口を開いた。
 そしてそのまま二人は何なら小難しい話しを始める。その光景をじっと見守る周泰。まだ不安は残っていたが。
「……やはり厳しいか」
「と、なると――」
 あ、
「もう一度、やってみます」
「すまない。そうしてくれ」
 いつもと、違う。
「では」
 呂蒙が出ていった。そして、孫権は執務を再開する。また深く息を吐いてからだ。
 やはり、いつもと違う。
「……どうかしたか、周泰?」
 気がつくと、周泰が孫権のすぐそばまでやってきていた。そして、顔を覗き込んでくる。
「……」
「周泰?」
 無口である事は知っていたが、何も言ってこないと何だが気味が悪い。
 だが、周泰は言葉を発するよりも先に行動を起こした。
「!? うわっ!」
 主である孫権を失礼にも肩に担ぎ、何処かへと運びだしてしまった。


 辿り着いたのは、孫権の寝室だった。孫権を担いだ周泰はすぐさま寝台に近づき、そこにゆっくりと孫権を横たわせた。
「い、いきなりで驚いたじゃないか」
「……顔色が」
「え?」
「……顔色が、悪いです……」
 上体を起こした孫権は、その言葉を聞いた途端、また寝台に横たわった。顔は少しだけ上気している。
「……よく、気がついたな。誰も気づかなかったというのに」
「……」
「確かに、朝から躯が怠くてな。風邪を引いたかもしれん。たが、孫呉を背負っている以上、簡単に休む訳には……」
「……駄目、です」
 周泰は寝台の近くで膝をついた。それに気づいた孫権は周泰の顔を見つめる。
「……躯を、大事にして下さい……」
 そう話した周泰の真剣な眼差しを受け、孫権はふ、と微笑んだ。
「……ありがとう、周泰。お前の言う通り、躯を大事にするとしようか」
 だから、私は休む、とお前から皆に伝えてくれ。





初泰権。ちょっと不安になりながらも仕上げました。よくよく考えると、周泰すっげぇ大胆だなぁ……と←
孫権の事なら何でもわかる周泰。それが理想です。

[2010年 7月 2日]