「終わっ、た……」
 未だに不慣れである、数々の報告書や嘆願書の作成……。
 それらが数日かかってようやく片付いたのである。普段は数が少ない為一日で終わるのだが、やるべき作業が重なってしまい、一度に多くの書簡を作るはめになってしまった。
 本当は早く片付けたかったのだが、数々の練兵がそれを阻んでいたのだった。
 こんな激務は二度と御免だ――張遼は目頭を押さえながらそう思った。
 ふと、何かに導かれるように張遼は自室にある寝台へ向かう。そして何の躊躇も無く、そこに寝転んだ。
 ――完成した書簡は、少し休憩したら届けよう。少しだけ……。




 暇だ。
 呂布は適当に歩き回っていた。自室には大量の執務が残っているが、それは見ない事にしている。
 暇を潰すに最適なのは――あそこしかない。

「張遼、かまえ」
 了承されていないにも関わらず、豪快に張遼の部屋の扉を開けた呂布。すぐに説教が始まると思っていたが――
「……張遼?」
 何も反応が返ってこない。居ないのだろうか。
 ずかずかと中に入ってみると、
「……」
「……すぅ……」
 寝台の上で、体を丸めて夢の世界へ旅立っている張遼の姿が。
「張遼」
 もう一度呼びかけてみる。だが目覚める様子は無く、代わりに体を更に丸めこませた。
 体を丸めているのはおそらく、春が訪れたとはいえ、掛布も無しに眠るにはまだ肌寒いからだろう。
 呼びかけても起きる気配を見せない張遼。
 こんな機会を見逃す呂布ではなかった。

 ぎしっ
 何とも頼りなさ気に音を出す寝台だが、壊れる様子は無い。
 もう目と鼻の先だ。息遣いの音がしっかりと聞こえる。
 そして、着物に手をかける――
 が、
「…………?」
「お、」
 張遼の目が開いた。見かけによらず綺麗な瞳。だが焦点は合っていない。
 それ以上何も動きが無かったので続きをしようかとしたが――
「……ん? どうした?」
 突然張遼が動きを見せた。のっそりとした動きで両腕を動かすと、それらを呂布の温かい躯に巻き付けたのである。
 そして子供のように擦り寄ると、再び深い眠りについたようだ。
 これで、下手に動く事が出来なくなってしまった。
「……たまには、いいな」
 こんな風に甘えてくるのは滅多に無い。否、絶対に無い。
 呂布は微笑むと、見た目より柔らかい張遼の髪を撫でた。

 目が覚めた時、いったいどんな反応をするのか――その瞬間が楽しみで仕方がない。





……本当は季節に合わせて仕上げたかったんですが……汗

[2011年 6月 6日]