瞼を通してくる日の光で張遼は目が覚めた。今日は久々の休暇の筈だ。
 ふ、と隣りを見てみると、息子・張虎はまだ夢の中にいた。こうしてじっくりと我が子の顔を見るのも、久々な気がする。
 昨晩の不安げな表情では無く、幸せそうな寝顔を浮かべているのに安心した張遼は、起こさぬようにそっと頭を撫でた。


「文遠様」
 閨から出てしばらく廊下を歩いていると、妻である周夾慮(しゅうこうりょ)が駆け寄ってきた。何やら慌てているようだ。
「どうした」
「小虎が居ないのです。まさか何かに……」
「大丈夫だ。虎は俺の寝台でまだ寝てる」
「まぁ!」
 そんな所にいるとは思わなかったのか、安心よりも先に驚きが出る。
「お騒がせして申し訳ありません、文遠様……」
「気にするな。虎の様子を見てくるといい」
 その言葉を聞き、周夾慮は頭を下げると張遼の閨へと向かう。


 いくら休暇とは言え、朝に行う鍛練は日課である。一通り汗を流し下人から乾いた布を受け取ると、それで躯を拭いた。

「起きたのか?」
 鍛練を終え、家の中に戻ると周夾慮が張虎を抱き抱えていた。だが張虎は目を半分だけ開けており、たまに欠伸をしている。まだ寝足りないのだろう。
「小虎、父上にご挨拶なさい」
「……むぅ」
 眠いからか機嫌が悪い。母親の腕の中でもう一眠りしようとしているのが明らかにわかる。
「……昨晩はどうして、小虎は貴方の所に行ったのですか?」
「悪い夢を見たようでな、夜中にやってきた」
「そうでしたか……」
 息子に視線を向ける周夾慮。気がつくと張虎は小さく寝息をたて、もう眠っていた。
「ほら、朝ですよ。起きなさい小虎」
 優しく周夾慮が起こしにかかるが、張虎は全く起きる気配を見せない。
「夾慮、重いだろう。虎をこちらに」
「え? はい」
 眠っている張虎を受け取る。息子の重みがずしっと腕にきた。
 改めて、張虎の成長を感じとれた気がした。
「……虎は大きくなったな。その内抱き上げるなんて出来なくなるんだろうな」
「えぇ、子供の成長は早いものですね」
 張虎を見ていると、自然と笑顔になる二人。息子が日々成長していくのは、二人にとって喜ばしい事である。
「このまま起こすのも可哀相だ、寝台に寝かせてやるか……」
 張虎を抱いたまま一番近い部屋へと向かう事にした。周夾慮も後ろからついていく。極力静かに歩くようにはしているが、今の所は起きる気配は無い。
 今は良い夢を見ていると信じたい。

 ――起きたら、一緒に遊んでやるか。





……家族の前では性格が変わる疑惑の張遼さん(何)

[2011年 8月 24日]